身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 カイゼルはさらに三枚目に目を通す。何も言わないが、目を光らせたところを見ると、製法が書かれているのだろう。

「ルーゼの香水にはアルナが使われてるんですね?」
「そのようだな。材料を集めるのは困難ではないが……」

 手紙を丁寧に折りたたむカイゼルに、エリシアは驚いた。

「難しくないって……、ルーゼはもう枯れてしまってノルディアにはありません。まして、乾燥させた皮だなんて、異国にあるかどうかも」

 困惑しながら言うと、カイゼルはうっすらと笑む。何かたくらむような意味ありげな笑みにエリシアが警戒すると、彼は手紙をポケットにしまった。

「ビクター、ルーゼに関わる書物がほかにもあるかもしれん。ここにあるすべてのものを荷馬車に積め」
「全部ですか? さすがに乗りませんよ」
「従者をここへ残し、すぐに王都から使いを寄越せ。俺たちは日が暮れる前にここを出発するぞ」
「……わかりました。明日の昼までには、すべて宮殿に運び入れます」
「じゅうぶんだ。さあ、エリシア、馬車へ戻ろう。急がねば、王都へ着くのが夜明けになる」

 やれやれと後ろ頭をかくビクターを残し、カイゼルは満足げな表情でエリシアの腰に腕を回すと、軽やかに作業場をあとにした。
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