身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



 まぶたの裏ににじむやわらかな光が、あたたかな日差しだと気づいたのは、誰かに名前を呼ばれた気がして目を覚ましたからだった。

「エリシア様はまだお休みになっています。……いいえ、殿下であろうともお通しすることはできません」

 きっぱりとした口調でやりとりするシルビアの声がする。

「昨夜は急なことでしたからお通ししただけです。……ええ、出直してくださいませ」

 シルビアがパタンと扉を閉めたとき、ようやくエリシアは寝ぼけまなこで体を起こした。

「シルビアさん、……殿下って、カイゼル殿下がいらしたんですか?」
「まあ、エリシア様、おはようございます。昨日は大変でしたね。なんでも、王都のはずれまでお出かけでしたとか」
「私、どうやって……」

 夜着を着ている自身に首をかしげていると、シルビアがカーテンを引きながら言う。

「カイゼル様に抱きかかえられて夜更けにお帰りになったときは、具合が良くないのかと驚きましたよ。疲れて眠っているだけと聞いて安心しましたけれど、ずいぶん深い眠りでしたので、よほどのことがあったのではと心配しておりました」
「それは本当ですか? カイゼル殿下に抱きかかえられてって……」
「こちらの部屋まで運ばれたんですよ。ですからさっきも、昨夜も入ったんだから今もいいだろうなんてわがままをおっしゃって。本当に乙女心がわからない無粋な方です」

 カイゼルにそんなことを言うのはシルビアぐらいだろうとおかしかったが、それよりも、彼に抱かれて帰ってきたことが宮殿内で話題になってるのではないかと青ざめてしまう。

 フェルナ村を出発すると直に日は沈み、カイゼルが寒くなるからと毛布を渡してくれて、それに身を包んだあと……。

(そうだわ。うとうとしてたら、カイゼル様が隣へやってきて、ひざに頭を乗せていいって言って……)

 カイゼルの太ももは筋肉が程よくついていて、少しごつごつしていたけれど、髪をゆるりとなでてくれる手が心地よかった。
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