身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 馬車が大きく揺れたのに気づいてうっすらまぶたを持ち上げたとき、馬車にもたれかかるようにして目を閉じた彼の顔がどこか妖艶で美しかったのを覚えている……。

 昨夜を思い出して赤くなっていると、シルビアがベッドサイドへやってくる。

「今日はこちらをお召しください。カイゼル様が動きやすいドレスをとおっしゃいましたので」

 彼女の腕には水色のドレスがかけられている。派手な装飾はないものの、艶やかな光沢を放つ生地はじゅうぶん贅沢なものに見えた。

「どこかへ出かけるのでしょうか?」
「さあ、それはおっしゃいませんでしたけれど、ルイ様がエリシア様にお会いになりたくて仕方ないのを、カイゼル様は考えてくださっていませんわね」

 シルビアは不満を言いながら、テキパキと着替えを手伝ってくれ、髪まですかしてくれる。

「ルイ殿下は今日もお健やかに?」
「ええ、それはもう。エリシア様がノアム大聖堂へ戻ってしまわれたら、悲しまれると思いますよ」
「あ……、それなんですけれど、ルイ殿下が再燃しないかどうか確認できるまでは宮殿に残るようにと、カイゼル殿下には言われていて」

 話が変わってしまって申し訳なく思いながら言うが、シルビアはパッと表情を明るくする。

「そうなんですかっ? それを聞いたらルイ様もお喜びになられます」
「再燃しないといいんですが」
「何をおっしゃいますか。聖女のエリシア様が看てくださったんですから、その心配はございません。念には念をですわね。カイゼル様も良いところに気づいてくださったわ」

 カイゼルは単純にエリシアを疑っているだけなのだが、シルビアは誤解したまま、食事の用意をすると言って、浮かれた様子で部屋を出ていった。
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