身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 うふふとシルビアは意味ありげに笑う。

 シルビアは大変な誤解をしているようだ。聖女として宮殿に呼ばれたころは、カイゼルはエリシアを信用していなかった。宮殿内のそこかしこでカイゼルと出会った覚えはあるが、あれは、遠目からにらんでいたのだろう。

 そもそも、カイゼルが倒れ、なりゆきで看病したあとは、忙しい日々に紛れて、彼が自分をどう思っているのか聞く機会もなかった。しかし、複雑なことに、キスされたことを思うとシルビアを強く否定できず、エリシアは黙ってドレスを受け取った。

「カイゼル殿下に婚約者様はいらっしゃらないのですか? ご結婚されていても不思議ではないご年齢なのに」
「カイゼル様はお優しい方なのですが、少々まつりごとには厳しいところがありますので、王太子妃になられる方には容姿だけでなく、外交力のある知性や、対等に物を言える胆力のある方を望んでおられるんですよ。これまで名の上がった姫君たちはお目にかからなかったようで、国王陛下も大変お困りなんです」
「ずいぶん、わがままな条件に思えますね」

 果たして、そんな女性が都合よく現れるものだろうか。一生結婚しないわけはないだろうが、今すぐに結婚を決めるような相手がいないのは間違いなさそうだ。

「本当ですよ。ですが、お待ちになった甲斐がありました。私も含め、宮殿の者たちは安堵しているんですよ」

(どういう意味かしら……?)

 首をかしげると、シルビアはくすりと笑って、エリシアを手で招く。

「さあさあ、聖女エリシア様、療養所の方々が首を長くしてお待ちです。その美しいお姿で病を打ちはらってしまいましょう」
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