身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



 老薬師のベルナンは馬車のそばでカイゼルとともにエリシアの到着を待っていた。フードのついたローブ姿の彼は、エリシアを見るなり、まぶしいものを見たかのように細い目をさらに細くし、

「薬師のベルナンと申します。聖女エリシア様にお目通りが叶い、大変光栄でございます。神々しいお姿には、神もお喜びでございましょう。それにしましても、カイゼル様の横に並ばれますと、神のいたずらとも言うべき……」

 と、長々としたあいさつを始め、カイゼルが苦笑したころに、ようやくうやうやしく頭をさげた。

「エリシア、馬車にはベルナンも同乗するが、何も気にしなくてよい。療養所はノアムよりも近く、わずらわしいことはないだろう」
「わずらわしいなんてことは何も」
「ベルナンは昔からおしゃべりが過ぎるからな」

 カイゼルはうっすら笑うと、にこにこと穏やかにほほえむベルナンを馬車に乗せ、エリシアの手を取る。

「聖女として大勢の目に触れさせるのは惜しいほどに美しいな。はやくこの病をなんとかしたいものだ」
「聖女としての威厳が感じられるなら、殿下のお選びになったドレスのおかげです」

 世辞を言うから、エリシアも彼をたたえると、なぜかカイゼルは困り顔をし、馬車の中からはベルナンの朗らかな笑い声が聞こえた。

 エリシアとカイゼルが馬車に乗り込むと、すぐに馬車は出発した。道中、ベルナンは自身の薬師としての活躍をエリシアに話して聞かせたが、その話を聞き飽きているであろうカイゼルが退屈する間もなく、ノアリエル療養所へはすぐに到着した。
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