身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



 執務室の扉を開けると、机に向かっていたカイゼルが顔を上げる。その目がこちらをとらえた瞬間、かすかに見えた疲れの色がすっと消えたような気がした。

(ベルナンさんが恋煩いだなんて言うから、変に意識しちゃうじゃない)

 エリシアは戸惑いながら中へと進む。

「殿下、……お疲れではありませんか?」

 おずおずと声をかけると、カイゼルはゆっくり立ち上がり、こちらへと歩み寄ってくる。

「やっと戻ってきたか。先ほど、ビクターから伝書が届き、結果が出たと聞いた。ご苦労だったな」

 カイゼルにねぎらわれるとは思ってなくて、エリシアは驚きつつも、それよりも何よりも成果がうれしく、「そうなんです」と嬉々として胸の前で手を合わせた。

「アルナはやっぱり、ルーゼの効果を効きやすくするみたいです。ベルナンさんがさらに研究を進めて、ノルディア国の隅々にまで運べる薬を作ってくださるそうです」
「そうだな。今のままでは薬が腐りやすいなど、不都合がたくさんある。時間はもう少しかかるだろうが、じきに還炎熱は収束するだろう」

 そううなずくカイゼルは、安堵からか優しくほほえむ。おそらく彼は、自分の容姿がどれほど整っているか知っているだろうに、その魅力を計算ずくには見せていないのだ。
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