身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 エリシアは、どくりと鳴った胸に手をあてた。

 自身が聖女でないことはわかっているし、聖女として崇められることに違和感はあった。しかし、はっきりとカイゼルに否定されると、自身のすべてが彼に拒絶されたような気がした。それは、彼の前に立つエリシアという名の娘が、聖女と騒がれたために存在しているからだった。

「さあ、エリシア。皆で手分けして、薬液を飲ませろ」

 振り返ったカイゼルの目は、思いのほか、柔和だった。

(私……頼られてる?)

 彼の役に立てると思ったら、なぜだか急に嬉しくなって、エリシアは微笑みながらうなずいた。

(そうよ。聖女でなくても、私はカイゼル様のために生きられるじゃない)

 急激に湧いてきた気持ちがエリシアをかき立てる。すぐさまエリオンとともに、ビクターが運んできたルーゼの薬液を修道士や修道女たちに使い方を伝えながら配った。

「私たちにもできる?」

 ルルカが話しかけてくる。

「もちろん。ほんの少しだけ酸っぱいから、嫌がる方には無理に飲ませないでね」

 そう言いながら、ルルカとマルナに小瓶を渡す。マルナはその小瓶を目の前に掲げて、キラキラと光る薄黄色の液体を繁々と眺めた。

「これが還炎熱に効くなんて不思議ね。どうなってるのかしら」
「私も驚いたの。昔から食べてたルーゼがこんなふうに役立つなんて」
「エリシアがいたから、この薬ができたのよね。エリシアはこの国の救世主ね」
「大げさ。薬はベルナンさんが作ったの。私はただ、ルーゼを食べて育ったって話しただけ」
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