身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 ルイは元気になった。ユレナ王妃もノアムへ戻ることを許してくれた。薬だって完成した今、エリシアにできることはなくなった。

「聖女だと嘘をついたことをお怒りなのでしたら、牢に入る覚悟はあります。でも、もうお許しくださったものとばかり……」
「もう怒ってはいない。俺がただ、エリシアにいてほしいだけなのだ」
「どうしてですか?」
「おまえを愛おしく思うからだ。もうわかっていたと思っていたんだがな」

 珍しく、カイゼルが頼りなげに眉をさげる。いつも自信に満ちあふれた人なのに、思いが伝わってなかったと知っただけで情けない顔をするなんて。

「わかっています……。わかっていると思います」

 エリシアは胸に手をあててうつむいた。カイゼルはとても真面目な人で、遊び半分でキスをするような人じゃない。

「でも私は、シムアで暮らしたいと思っているんです……」

 カイゼルからの返事はなかった。長い沈黙が続き、思い切って顔をあげると、彼は途方にくれた顔をしていた。国中に蔓延する病を解決に導いた男とは思えない、なすすべのない表情だった。

「どうしても修道女になりたいのか?」
「私には帰る家がありません……。修道女になれば、雨風をしのげる場所で暮らせます。それに、子どもたちに勉強を教えることもできます。誰かの役に立てる日々を過ごせたら、きっと良い人生になると思っています」
「エリシアひとりが暮らせる屋敷など、俺が簡単に用意してやれる。俺のために生きる人生が幸せではないと言うのか」
「……そ、そうは言っていません。ただ……、ただただ殿下のそばにいるだけは難しく思ってます」
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