身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「えっ、待ってよ。何があるのっ? 私も行くー」

 お鍋の火を消したルルカも、スカートの裾をつまむと走って追いかけてくる。

「お姉さまたちに怒られるのは、みんな一緒よ」

 エリシアはヒヤヒヤしながらそう言うが、マルナの勢いは止まらない。そうしてたどり着いたのは、教会の門だった。

「何……、お客様?」

 つぶやくエリシアの背中を、追いついたルルカを引き止めたマルナが押す。

 門の前には豪華な馬車が停まっていた。エリシアの胸は大きく拍動した。見覚えのある馬車から、ずっと会いたくてたまらなかった青年が降りてくる。

 マントを翻し、まっすぐにこちらへ向かって歩いてくる彼から、エリシアは目が離せなかった。

「どうして……」

 もう会えないと思っていた。あの日、返事を拒んだ日から、彼の気持ちは離れてしまったと思っていたから。

「必ず、会いに行くと伝えたはずだが?」

 カイゼルはあきれたように笑う。少し頼りないような優しい笑顔。エリシアを気遣い、そして、不安を覚えているような。

 エリシアが黙っていると、彼は穏やかに話し出す。

「このひと月で、ようやく全土にルーゼの薬液を行き渡らせた。今のところ、大きな問題もなく、還炎熱は沈静化しつつある。異国から取り寄せたルーゼの果実も飛ぶように売れ、王都も以前の活気を取り戻している。国王陛下が褒美をやると言うから、いくつか許しを得てきた」
「いくつか……ですか?」

 一国の王が褒美と言えば、勲章を授かるものだと思っていただけに、エリシアはあきれた。なんという図々しさだろう。
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