身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



「シムアの教会へは歩いていきますが、よろしいですか?」

 立ち去るサイモンの後ろ姿を見送っていると、エリオンが穏やかな口調で話しかけてきた。迷惑なはずなのに、そんな様子はおくびにも出さない。優しい人に出会えたようだと、ほっと胸をなでおろす。

「はいっ、よろしくお願いします」

 エリシアは頭をさげると、エリオンとともに大聖堂へ背を向けて歩き出す。

「大聖堂に集まっているのは、どういう方たちなんですか?」

 ちらりと後ろを振り返って尋ねる。人だかりは変わらずにあって、騒ぎは続いていた。

「王都では今、高熱を患う方が急激に増えています。診療所もいっぱいで、医師にかかれない患者たちがリビア様を頼って訪れているんですよ」
「リビア様が治してくださるんですか?」
「すべての方を……というわけにはいきませんので、司祭様をはじめ、私たち修道士や修道女で看病しています。それでも人手が足りず、あのようなことになっていて……。驚かれましたよね」
「そんなに大変な病が流行っているんですね……」

 大聖堂が混乱しているのは間違いないようだ。その上、王宮からの使者が聖女を頼って訪れるとあれば、いよいよ、大変な熱病なのだろう。

「あなたも……ああ、失礼ですが、お名前をまだうかがってませんでしたね。私はエリオン・カンベルと申します」
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