身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「毎朝、私とルルカは庭の掃除が終わったら、井戸から水を汲んできて、宿舎の掃除をするの。今日からエリシアさんも一緒にお願いね」
マルナは早速、エルダが用意してくれた生成りの服に着替えたエリシアにぞうきんを差し出す。
「いつもふたりで掃除してるんですか?」
エリシアはエプロンをつけるとぞうきんを受け取り、宿舎の長い廊下を眺める。決して広い建物ではないが、ふたりで掃除するには大変そうだ。
「シムアには、エルダ様と私たちのほかに、3人の修道女がいるんだけど、みんな年長の修道女ばかりだから、庭と宿舎の掃除は私たちの仕事なの」
「そうなんですか。大変ですよね」
うなずくと、ルルカが口を開く。
「でも、食事の準備や食堂の掃除はお姉さまたちがやってくれるし、部屋の掃除は各自でするの。口うるさい人もいないし、すっごく快適だから、エリシアさんもすぐに馴染めると思う」
「はい。お役に立てるようにがんばります」
気合いを入れて言うと、すぐにエリシアは廊下に置かれた桶の中へぞうきんを沈めた。冬の冷たい水は氷水のようだった。熱いような痛いような冷たさに身をすくめたが、フェルナ村での極貧生活を思えば、大したことではなかった。
キュッとぞうきんを絞ると、真っ赤になった手のまま、廊下にひざをついて拭き掃除を始める。マルナとルルカは無言で顔を見合わせたあと、エリシアと一緒に黙々とぞうきん掛けを始めた。
廊下の拭き掃除が終わると、次はマルナが階段の掃き掃除をして、ルルカが窓拭きを始めた。高い窓では、ルルカが脚立の上でつま先立ちするから危なっかしそうで、エリシアはヒヤヒヤしながら脚立を押さえた。
ルルカに変わって、エリシアも窓拭きをし、最後の一枚を拭き終えるころに、階段掃除を終えたマルナも戻ってきた。すると、脚立をたたむエリシアにルルカが、「こっちこっち」と手招きする。