身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
食事を終え、片付けを済ませると、次はお祈りをするのだと教えてくれるルルカとともに、エリシアは教会に移動した。
シムアの教会に一歩入ると、潮の香りの中に、ほんのりと甘い樹木の香りが漂っているのに気づいた。こじんまりとした祭壇に香炉が置かれている。甘い香りはそこからしているようだ。
ルルカはエリシアの手を引くと、五列ほど並ぶ長椅子の一番後ろに腰かけた。あとからゆっくりやってきたマルナに挟まれる形で座ったエリシアは、改めて教会の中を見回す。
朝日を受けるステンドグラスは爽やかな輝きを放ち、天使が描かれた天井画には疲れた心を優しく包み込むような柔らかさがある。ここにいるだけでホッとする。そんな空間で、ルルカが明るい声をあげる。
「エリシアさんはどこから来たの?」
それを知りたくてうずうずしていたみたいに、彼女は身を乗り出した。
エリシアはほんの少し、身の上話をしてもいいものだろうかと躊躇した。幸いなことに、誰もエリシアが男爵令嬢であることに気づいていない。このまま知られないようにしていたら、もし、ガレスがエリシアを追って王都へやってきても、『フェルナ村から逃げてきた男爵令嬢』のうわさを聞きつけて、教会を訪ねてくることはないだろう。
「言ってもわからないような田舎から。両親が亡くなって、親戚もいないから、ひとりぼっちになって。王都に来ればなんとか生きていけるんじゃないかって思ったんです」
話せる限りを伝えたら、ルルカは悲しそうに眉をさげた。
「お父さんやお母さんまで。兄弟もいないんだね。大変だったよね」
「でも、ノアム大聖堂に行ったら、たまたま司祭様にお会いできて、ここに連れてきてもらえたから」
「大聖堂に行ったの?」