身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 ルルカは驚いたようにまばたきをした。彼女も熱病が流行っているのを知っているのだろう。

「すごい人だったでしょ?」

 マルナもそう言う。今、大聖堂を訪ねるなんて勇気のある行動だとでも思っているようだ。

「大聖堂には近づけないぐらいの人でした。どんな様子かは全然わからない感じで」
「近づかなくて正解だよー。修道女たちが看病してるって聞くけど、みんな病気をもらうんだって。すごく怖い病だって」

 ルルカはおびえるようにそう言うと、マルナもうなずく。

「だから、私たちは毎日、はやく病が落ち着きますようにって祈ってるの。それなのに、病は広がる一方みたい」
「リビア様のお力も限界なんじゃ……って批判するひどい人もいるぐらいなんだよ」
「そんなにひどいの……」

 絶句すると、ルルカがハッとする。

「ごめんね。こんな話、不安だよね。シムアは大丈夫だよ。エリシアさんは安心してここにいてね」
「ありがとう。ルルカさんやマルナさんがいてくれるから、何も心配してないです」

 そう言うと、ルルカは照れくさそうに笑い、「ねぇ」と、エリシアの手を両手で握る。

「ルルカさんはやめて、ルルカって呼んで。ね、マルナもいいでしょ?」
「私はかまわないわ。敬語も窮屈だし」

 マルナはすまし顔で言うが、友だちになってあげてもいいっていう口調だった。

「はい、わかりました。ルルカにマルナ、よろしくね」
「私たちもエリシアって呼ぶね」
「うん。お友だちいないから変な感じ」

 エリシアがそわそわすると、ルルカは「いないの?」と意外そうな顔をする。

「実は……私たちもね、ずっとふたりだけなんだよ」
「ずっとって?」
「私たち、両親を知らないんだよね。生まれてすぐに、シムアの教会に捨てられてたんだって。エルダ様が見つけてくれなければ、寒さで死んでたかもしれないって」

 ルルカは軽く口にしたが、瞳の奥にはむなしさが浮かんでいるようにも見えた。彼女から見た自分は、順風満帆に生きてきた人間に見えるのかもしれない。実はそうじゃないとわかって、気を許してくれるのが伝わってくる。
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