身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「ルルカ、そんな話はいいじゃない」

 どんな言葉をかけたらいいのかわからずに戸惑うエリシアを見かねたのか、マルナがたしなめる。

「あっ、びっくりさせちゃった? でもね、私たちはエルダ様のおかげで、毎日こうやって楽しく暮らしてるんだよ。エリシアは初めてのお友だちだから、うれしくって」
「ちょっと驚いたけど、大丈夫。私もここに来るまで不安でいっぱいだったけど、本当にふたりに会えてよかった」
「わあ、うれしい。私たち、仲良くなれそうだね。ね、エリシア。もう一つ聞いていい?」

 ルルカは好奇心に満ちた目で、エリシアの顔を下からのぞき込む。

「なーに?」
「エリシアは香水つけてるの? なんだかずっといい匂いがしてるから気になってたの」
「香水?」

 エリシアはハッとして、ポケットから革製の袋を取り出す。

「もしかしたら、これかも。父の形見を肌身離さず持ってるの」
「お父さんの形見?」
「うん、香水。ルーゼっていう果実から出来てるんだけど、ちょっと珍しい香りみたい」

 袋のひもを解き、手のひらの上にひっくり返すと、小さな小瓶が転がり出てくる。透明のガラス瓶の中で、黄金色の液体が揺れている。

「すごく匂うかな?」
「修道女は香水をつけちゃいけないから、結構匂いに敏感なんだけど、お姉さまたちはこっそりハンカチに染み込ませたりして楽しんでるみたいだから、エルダ様も怒ったりしないと思う」

 ルルカはそう言って、興味津々に小瓶を眺める。

「ルーゼって初めて聞いたかも。ちょっと嗅いでみていい?」
「いいよ」

 エリシアが小瓶の蓋をそっと開けると、ルルカは鼻をくんくんと揺らした。

「ほんとにいい香り。甘くって爽やかな不思議な感じ。エリシアそのものみたい。ね、マルナも嗅いでみて」
「私は香水に興味ないから。でも、ルルカがそんなに言うなら、ちょっとだけ」

 素っ気なく言うマルナも小瓶に顔を近づけると、目をキラキラと輝かせる。冷静な彼女も、香水には憧れがあるのかもしれない。

「ほんとう。変わった香りね。癒されるってこういうことかなって感じの匂い」
「マルナもそう思う? ずっと嗅いでたい匂いだよね。エリシア、香水はそれだけなの? 王都に売ってたりしないかな?」
「売ってないと思う。たぶん、これだけ」
「そっかぁ、残念。明日は買い物にいく当番だから、こっそり探しに行こうと思ったのに」
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