身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 ルルカが唇を尖らせると、マルナがあきれ顔をする。

「香水なんて買ったら、さすがにエルダ様でも怒るわよ。この間も髪飾りこっそり買って叱られたでしょ」
「だってー、可愛かったんだもの」

 質素倹約の修道女とはいえ、ルルカはおしゃれに興味のある年頃の女の子なのだろう。

「ルルカ、ハンカチ持ってる?」

 エリシアが尋ねると、ルルカは首を傾げた。

「ハンカチならあるよ。どうして?」
「お姉さまたち、ハンカチに香水つけてるんだよね? ルルカのハンカチにもつけてあげる」

 そう言うと、ルルカの瞳はみるみるうちに大きくなった。

「本当? いいの? 形見なんだよね? それしかないんじゃないの?」

 矢継ぎ早に言うから笑ってしまう。

「ほんの少しだけなら大丈夫だから。ハンカチ、出して」
「うれしい。だって、本当にすごくいい香りだから」

 ルルカはポケットからハンカチを取り出して、折りたたまれたそれを開ける。そこへ、エリシアは小瓶を傾け、一滴ぽとりと垂らした。

 ルルカはすぐにハンカチを鼻先へ持っていき、花が咲いたような笑顔を見せる。

「元気出る。大事にするね」
「私も、ハンカチにつけてみようかな。マルナはどう?」

 エリシアが尋ねると、マルナはしかつめらしく眉を寄せる。気に入らないのだろうか。不安に思ったとき、

「エルダ様に叱られるときは三人一緒よ」

 と、そそくさとマルナがハンカチを取り出すから、エリシアとルルカは顔を見合わせて笑った。

「あらあら、朝から元気なこと」

 後ろから穏やかな女性の声がする。

「あっ、エルダ様、おはようございます」

 マルナが素早く立ち上がり、挨拶をする。エリシアもルルカも同様に頭をさげる。

「はい、おはようございます。マルナにルルカ。それにエリシア。そろそろ祈りの時間です。おしゃべりは控えましょうね」

 エルダはすっかり打ち解けた三人を優しい眼差しで眺め、やんわりとたしなめると祭壇の方へ向かって歩いていく。

「またあとでね」

 エリシアが小瓶を揺らしてこっそり小声で言うと、マルナはちょっとうれしそうにうなずいた。
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