身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



 修道女の一日は、思いのほか、忙しかった。

 朝のお祈りを済ませると、隣接した孤児院に出かけ、子どもたちに読み書きを教えた。ルルカたちも同じ孤児院で育ったそうだ。三歳ぐらいの子から十歳ぐらいの子までさまざま、合計七人の面倒を見ていた。

 子どもたちがお昼寝をしたあと、教会へ戻り、昼食を食べた。午後は午前に比べると少しゆとりがあったけれど、裁縫や宗教の勉強であっという間に時間が過ぎた。

 エリシアがルルカたちとようやくゆっくり話せる時間が持てたのは、夕食後から就寝までの小一時間ほどだった。

 それでも、エリシアの生活はフェルナ村にいた頃よりも充実していた。マルナの部屋に集まり、三人でひたいを寄せ合って、王都で見聞きした旅芸人一座の美しい青年役者の話や、宮廷に仕える吟遊詩人の詩などを紙に書いては音読して楽しんだりした。

 王都で見たといえば、エリシアは王太子カイゼルを見かけたと話した。するとルルカが、いつも怖い顔で王都を駆け巡っていると評判で、絵本に出てくるようなあこがれる王子様とは程遠いと聞いたという。エリシアはカイゼルの顔を思い起こした。確かに、目つきは鋭く、若い娘にも容赦がない。評判通りの人かも、とエリシアが言うと、ルルカもマルナもがっかりした。

 ルルカやマルナが修道女であるということ以外は、のびのびと育ったエリシアと何も変わらない女の子で、楽しい日々はあっという間に過ぎた。

「エリシアもそろそろ、修道女見習いになったらいいのに」

 ルルカがそう切り出したのは、エリシアがシムア教会へやってきて三ヶ月が過ぎた、ある晴れた温かな日のことだった。

「エリシアなら立派な修道女になれると思う。マルナもそう思わない?」
「そうよね。エルダ様も、エリシアの勤勉さには感心してるもの。三ヶ月が決して短いとは思わないし、エリシアが修道女になりたいならいいと思う」

 マルナも大きくうなずいて同調すると、ルルカが尋ねてくる。

「エリシアはどうしたいの?」
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