身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「シスター・エルダから話は聞きました。楽しく過ごせているようですね」
「はいっ。みなさん優しい方ばかりで。これもすべて司祭様のおかげです」
「エリシアさんの努力のおかげですよ。この病は終わりが見えませんが、必ずシムアへ戻れますから、希望を失わずに頑張りましょう」
「はい、大丈夫です。一生懸命、お勤めします」
張り切るエリシアが微笑ましかったのか、サイモンはそっと目を細める。
やがて、馬車がゆっくりと動き出し、シムアの教会が遠ざかっていく。
エリシアはほんの少し身を乗り出す。入り口から飛び出してきたルルカが手を振っている。涙をぬぐうしぐさをする彼女の肩に手を添えるマルナも、案じるようにじっとこちらを見ていた。
じゅうぶんに注意していたはずのサイモンですら、熱病を患った。いくら体に自信があるエリシアでも、病魔からは逃れられないかもしれない。
ふたりの姿が見えなくなると、エリシアはそっとポケットの上から香水の瓶に触れた。
両親が大事に育てたルーゼの果実。みずみずしい果実はよく食卓に並び、余った果実で香水や酒を造っていた。幸せに暮らしていた頃の光景が浮かび、こうしていると、不思議と両親に守られているように感じた。
(大丈夫。私ならできるから)
不安な気持ちを打ち消すように、そう心に言い聞かせると、これから始まる新たな生活を想像し、静かに目を閉じた。
「はいっ。みなさん優しい方ばかりで。これもすべて司祭様のおかげです」
「エリシアさんの努力のおかげですよ。この病は終わりが見えませんが、必ずシムアへ戻れますから、希望を失わずに頑張りましょう」
「はい、大丈夫です。一生懸命、お勤めします」
張り切るエリシアが微笑ましかったのか、サイモンはそっと目を細める。
やがて、馬車がゆっくりと動き出し、シムアの教会が遠ざかっていく。
エリシアはほんの少し身を乗り出す。入り口から飛び出してきたルルカが手を振っている。涙をぬぐうしぐさをする彼女の肩に手を添えるマルナも、案じるようにじっとこちらを見ていた。
じゅうぶんに注意していたはずのサイモンですら、熱病を患った。いくら体に自信があるエリシアでも、病魔からは逃れられないかもしれない。
ふたりの姿が見えなくなると、エリシアはそっとポケットの上から香水の瓶に触れた。
両親が大事に育てたルーゼの果実。みずみずしい果実はよく食卓に並び、余った果実で香水や酒を造っていた。幸せに暮らしていた頃の光景が浮かび、こうしていると、不思議と両親に守られているように感じた。
(大丈夫。私ならできるから)
不安な気持ちを打ち消すように、そう心に言い聞かせると、これから始まる新たな生活を想像し、静かに目を閉じた。