身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



「今日は風があるから、東側の高窓を開けておきませんか?」

 エリシアは大広間に姿を見せたサイモンに声をかけた。

「いいでしょう。それにしても、よく気が利きますね。エリシアさんが来てから、大広間が明るくなったと評判ですよ」

 ノアム大聖堂に来て五日。エリシアは大広間の換気やベッドシーツの交換を積極的に手伝い、大聖堂の生活にもようやく慣れてきていた。

「私はまだお役に立てることが少ないだけです」

 看病に追われて疲弊する修道女たちとは違い、考える時間があるだけだとエリシアは謙遜すると、早速、大広間の片隅に立てかけてあった長い棒を手に取った。

 高窓の取っ手にフックをひっかける。ぐっと力を込めて引っ張ると、窓がキィと音を立ててゆっくりと開いた。

 ほかの窓も次々に開けていく。ほのかにあたたかな風が吹き込んでくる。すべての窓を開け終えたとき、誰かの気配を感じてエリシアは振り返る。いつの間にかサイモンはいなくなっていて、その代わりにというのか、穏やかな笑みを浮かべる青年が立っていた。

「エリオンさん、お久しぶりです」

 エリシアはうれしくなって、すぐさま駆け寄った。

「こちらへ手伝いに来ていると聞いてましたが、お元気そうで安心しました」
「エリオンさんも」
「はい。しっかり休ませてもらいましたから、もう大丈夫です。ただ……」

 エリオンはわずかに表情を曇らせる。彼がなぜそんな顔をするのか、エリシアはすぐにわかった。

「還炎熱……ですよね。やはり、ほとんどの方が再燃するのでしょうか?」
「いえ。そういうわけではありません。しかし、ノアム大聖堂へ運ばれる重症の方は再燃しやすいのは事実です。ひと月……いえ、ふた月以内には戻ってこられる方が多いんですよ」
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