身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 その日は大広間にいる半分の患者の看病をした。エリオンが戻ってきたこともあり、ほかの修道士や修道女も休みを取ることができ、目の行き届かない患者がいるようなことはなくなった。

 目に見えて患者たちの表情も明るくなり、患者同士で雑談する姿まで見られるようになった。高窓から吹き込む風や、ステンドグラスに差し込む柔らかな春の光が、ますます患者たちを元気づけるようだった。

 回復した患者がひとり、またひとりとノアム大聖堂を立ち去っていく。そしてまた新たな患者がやってくる……。

 そんな忙しい毎日を送っていたある日、エリシアはたまりにたまっていた名簿の整理を任されていた。これまでは一覧でしかなかったものを、患者ごとの記録に移し替えようというものだ。再熱患者の名前を、ひとりずつ古い名簿から拾っていくうちに、違和感を覚えてふと手を止めた。

「……あれ? この人も、戻ってきてないわよね……」

 そうと気づくやいなや、エリシアは目の色を変えて名簿をさかのぼる。そのたびに胸が高鳴る。

(やっぱり……、間違いないわ)

 思わず名簿を持って立ち上がり、サイモンのもとへ駆け寄った。

「サイモン様、あのっ」

 エリシアがすでに整理し終えた名簿を眺める彼は、優しくほほえむとゆっくりうなずく。

「気づきましたか。エリシアさん、あなたが看病した患者全員、誰一人として再燃していません。これは驚くべき成果です。リビア様も、あなたには何か特別な力があるのではないかとお考えになっていますよ」
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