身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



『ノアム大聖堂に新たな聖女が誕生したらしい!』
『聖女様に触れられると、還炎熱にかかることはないらしいぞっ』
『とんでもなく清らかで、美しい娘らしい!』
『リビア様の後継者が現れたぞっ。ノルディア国はこれからも安泰だー!』

 王都アベリアに、新聖女誕生のうわさはまたたく間に広まった。

 エリシアは街の熱気など露知らず、毎日毎日還炎熱にかかった患者の世話を一生懸命手伝っていた。

 雨季に入ると、患者はますます増えた。窓が開けられず、大広間の中に、じめじめした生ぬるい湿気が広がり、ふたたび、修道女や修道士たちの士気も下がってきていた。

「エリシアさんはいつもお元気ですね。明るく振る舞われていて偉いですよ」

 疲れ切った表情のエリオンが、アルナの入った手桶を抱えるエリシアに声をかける。

「私はできることをするだけですから。先ほど、エリオンさんのお部屋のアルナをかえておきました。サイモン様が、雨季が終わるまでは朝夕と二回交換しましょうと言っていたので」
「それはありがとうございます。手のひらが汗ばんで仕方ありませんよ」
「アルナで洗うとさっぱりしますよ。これ、今から私の部屋に持っていく新しいアルナですが、お使いになりますか?」

 手のひらをマジマジと眺めるエリオンに、エリシアが手桶を差し出す。

「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。すぐに部屋で洗います。……それにしても、エリシアさんのアルナはなんだかいい香りがしますね」
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