身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「ルイ殿下は大丈夫なのでしょうか?」
「さあねぇ。王宮のことだから、詳しいことは分からないけど……、もしも、ルイ殿下が快方に向かわなければ、王太子殿下も黙ってないだろうさ。今ごろ大聖堂はてんやわんやだろうねぇ」
「カイゼル殿下は厳しい方だからなぁ」
男は途方にくれた顔をすると、女と無言で顔を見合わせて肩をすくめた。
王太子カイゼル・アシュフォード___
エリシアもその名を知らないわけではなかった。貴族の令嬢が色めき立つほどの美貌を持ちながらも、決して甘い顔を見せない冷酷な王太子だとのうわさは、片田舎のフェルナ村にも届いていた。
エリシアは不安があふれてくるのを感じながら、窓の外に目を向けた。大きな街が見えてきている。王都はもうすぐそこだ。
(無事に、修道女になれるかしら……)
男爵令嬢といえども、エリシアは決して特別な存在ではなく、ただでさえリビアに会うことができないかもしれないのに、大聖堂は今、混乱しているという。
しかし、もう引き返せない。村へ戻れば、ガレスからひどい仕打ちを受けるだろう。命だってないかもしれない。大聖堂で働くことができれば、必ず道は開けると、今は信じるしかないのだった。
日が暮れる前に、馬車は王都に着いた。エリシアは古びたバッグ一つを片手に、馬車から降りた。
初めて王都へ来たのは、父のグスタフ・オルティスが爵位を授かったときだ。エリシアはまだ5歳だったが、母のフローラとともに王都を訪れた。爵位に興味のない父は、晩餐会は退屈だったと、エリシアと母の待つホテルへ戻ってくると、家族3人で細々と食べる食事を楽しんでいた。それが、王都での記憶の一つだ。
そんな懐かしい出来事を思い出しながら、辺りを見回す。ノアム大聖堂はアシュフォード宮殿のそばにあると聞いている。王都へ着けば、宮殿はすぐに見つかると思っていたが、遠目に見える荘厳な建物がそうなのか、確信が持てなかった。
「さあねぇ。王宮のことだから、詳しいことは分からないけど……、もしも、ルイ殿下が快方に向かわなければ、王太子殿下も黙ってないだろうさ。今ごろ大聖堂はてんやわんやだろうねぇ」
「カイゼル殿下は厳しい方だからなぁ」
男は途方にくれた顔をすると、女と無言で顔を見合わせて肩をすくめた。
王太子カイゼル・アシュフォード___
エリシアもその名を知らないわけではなかった。貴族の令嬢が色めき立つほどの美貌を持ちながらも、決して甘い顔を見せない冷酷な王太子だとのうわさは、片田舎のフェルナ村にも届いていた。
エリシアは不安があふれてくるのを感じながら、窓の外に目を向けた。大きな街が見えてきている。王都はもうすぐそこだ。
(無事に、修道女になれるかしら……)
男爵令嬢といえども、エリシアは決して特別な存在ではなく、ただでさえリビアに会うことができないかもしれないのに、大聖堂は今、混乱しているという。
しかし、もう引き返せない。村へ戻れば、ガレスからひどい仕打ちを受けるだろう。命だってないかもしれない。大聖堂で働くことができれば、必ず道は開けると、今は信じるしかないのだった。
日が暮れる前に、馬車は王都に着いた。エリシアは古びたバッグ一つを片手に、馬車から降りた。
初めて王都へ来たのは、父のグスタフ・オルティスが爵位を授かったときだ。エリシアはまだ5歳だったが、母のフローラとともに王都を訪れた。爵位に興味のない父は、晩餐会は退屈だったと、エリシアと母の待つホテルへ戻ってくると、家族3人で細々と食べる食事を楽しんでいた。それが、王都での記憶の一つだ。
そんな懐かしい出来事を思い出しながら、辺りを見回す。ノアム大聖堂はアシュフォード宮殿のそばにあると聞いている。王都へ着けば、宮殿はすぐに見つかると思っていたが、遠目に見える荘厳な建物がそうなのか、確信が持てなかった。