身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
*
ノアム大聖堂の扉を出ると、着慣れないローブにつまづかないように、慎重に階段を降りた。大通りを背に立つビクターの後ろには、豪華な四頭立て馬車があり、中にカイゼルが乗っているのが見えた。
エリシアはグレゴールとサイモンに出発のあいさつを済ませると、さわやかな笑顔で手を差し伸べてくれるビクターに支えられて馬車に乗り込んだ。
「聖女様、宮殿へ出発します。時間はさほどかかりませんので、ご安心ください」
ビクターはそう声をかけると、黒毛馬にまたがった。エリシアの前で黒いものがゆらめく。それが、ビクターのマントだと気づいたときには、馬車はゆっくりと走り出していた。
(あれ……? ビクターさんのマント、ほかの騎士とは違うみたい)
エリシアは馬車の周囲を離れて走る騎士たちのマントを眺めた。どれも白のマントに銀の留め具。しかし、馬車の横をゆったりとついてくるビクターの漆黒のマントには、金糸で縁取りがあり、留め具も金色だった。
(何か特別な騎士様なのかしら……)
好奇心がまさって、辺りをきょろきょろ見回すが、聞けるような人はいない。唯一、聞けるとしたら……。エリシアはちらりと、目の前で足を広げ、両腕を組み、ピクリとも動かないカイゼルを見上げる。彼は嫌味のひとことでも言いたそうな冷たい眼差しで、じろりとこちらを見下ろしてくる。エリシアはすぐに目をそらす。
(ビクターさんにあとで直接聞いてみればいいわ)
視界の片隅で、カイゼルが腕組みをやめ、話しかけたそうにほんの少し前かがみになったのがわかったが、エリシアは必死に車外の風景へ気をそらした。王宮へ着けば、ルイの世話にかかりきりになる。カイゼルと直接話すことはないだろう。
(ルイ殿下はまだお小さいと聞いているし、カイゼル様みたいに怖い子じゃないはずだわ。大丈夫よ)
エリシアは自身に言い聞かせると、やがて青い空に現れた王城の尖塔に、ホッと胸をなでおろした。
ノアム大聖堂の扉を出ると、着慣れないローブにつまづかないように、慎重に階段を降りた。大通りを背に立つビクターの後ろには、豪華な四頭立て馬車があり、中にカイゼルが乗っているのが見えた。
エリシアはグレゴールとサイモンに出発のあいさつを済ませると、さわやかな笑顔で手を差し伸べてくれるビクターに支えられて馬車に乗り込んだ。
「聖女様、宮殿へ出発します。時間はさほどかかりませんので、ご安心ください」
ビクターはそう声をかけると、黒毛馬にまたがった。エリシアの前で黒いものがゆらめく。それが、ビクターのマントだと気づいたときには、馬車はゆっくりと走り出していた。
(あれ……? ビクターさんのマント、ほかの騎士とは違うみたい)
エリシアは馬車の周囲を離れて走る騎士たちのマントを眺めた。どれも白のマントに銀の留め具。しかし、馬車の横をゆったりとついてくるビクターの漆黒のマントには、金糸で縁取りがあり、留め具も金色だった。
(何か特別な騎士様なのかしら……)
好奇心がまさって、辺りをきょろきょろ見回すが、聞けるような人はいない。唯一、聞けるとしたら……。エリシアはちらりと、目の前で足を広げ、両腕を組み、ピクリとも動かないカイゼルを見上げる。彼は嫌味のひとことでも言いたそうな冷たい眼差しで、じろりとこちらを見下ろしてくる。エリシアはすぐに目をそらす。
(ビクターさんにあとで直接聞いてみればいいわ)
視界の片隅で、カイゼルが腕組みをやめ、話しかけたそうにほんの少し前かがみになったのがわかったが、エリシアは必死に車外の風景へ気をそらした。王宮へ着けば、ルイの世話にかかりきりになる。カイゼルと直接話すことはないだろう。
(ルイ殿下はまだお小さいと聞いているし、カイゼル様みたいに怖い子じゃないはずだわ。大丈夫よ)
エリシアは自身に言い聞かせると、やがて青い空に現れた王城の尖塔に、ホッと胸をなでおろした。