身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 真っ赤なじゅうたんの上を、シルビアはゆっくりと歩いていく。

 エリシアは廊下に飾られた花瓶や絵画を眺めみたい衝動にかられた。それほど城内は華やかさにあふれていた。エリシアが知る王都での暮らしには決してない豊かさ。ルルカやマルナに話して聞かせたら、どんなにか目を輝かせて楽しむだろう。

 シムアでの楽しい生活が思い浮かんで、エリシアはこっそりと城内の様子を目に焼き付けながら、シルビアの後ろに続いた。

「先ほどは失礼しました。まさか、聖女様がいらっしゃるとは聞いていなかったものですから」

 階段を昇り終えると、シルビアは申し訳なさそうに口を開いた。

「驚くのも無理はありませんから。リビア様の代理には間違いないんです」
「最近、巷ではノアム大聖堂に聖女が現れたとうわさになっていると聞きます。まさかと思っていましたが、こんなにもはやくお目にかかれるなんて思ってませんでしたわ。ビクター様も、代理などと連絡せず、リビア様に次ぐ聖女様がいらっしゃると教えてくださればよかったのに……」

 わざとらしくうらめしい顔をして、冗談まじりにビクターをとがめるシルビアは、おちゃめな人のようだ。

「ビクターさんはどのような方なんですか?」
「ビクター様は王太子殿下直属の近衛騎士隊長様なんですよ。気さくな方ですよね」
「本当に。物腰が柔らかいので、つい、話しやすそうと思ってしまって」

 シルビアはくすりと笑う。

「ビクター様は愛嬌がありますよね。ベルク侯爵家のご子息様で、王太子殿下の幼なじみでもありますから、宮殿でものびのびとされているんだと思いますよ」
「幼なじみなんですか?」
「みなさんの前では礼儀正しくされてますけど、殿下に軽口をきくのはビクター様ぐらいでしょう」
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