身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 鋭い瞳に見つめられて、エリシアは口もとをきゅっと引き締めた。彼女の瞳が持つ力強さは、カイゼルとまったく同じものだ。エリシアを疑い、試している。

「恐れながら申し上げます。ノアム大聖堂で使うアルナは独特の匂いを放ちません。ルイ殿下もきっと、お気に召してくださると思います」
「それはどういうことですか?」
「私の手荷物を開けてもよろしいですか?」

 ユレナがシルビアにうなずきかけると、彼女はすぐさまエリシアのトランクを運んできた。

「シルビアが開けなさい」

 ユレナの命令で、シルビアはトランクの蓋を開けた。中には、着替えが入っているだけだが、エリシアは衣服の上に置かれた小袋を指差す。

「その袋の中に香水が入っています。大変貴重なもので、あるのはそれだけです」
「香水……? シルビア、確かめなさい」

 言われるがまま、シルビアは袋の中から小瓶を取り出す。もう半分ほどに減ってしまったが、透き通った黄色の液体が、シャンデリアの光を受けて金色に輝き、神秘的な光を放っていた。

(今なら、ユレナ様を説得できそうだわ)

「そちらはルーゼの実から作られた香水です。ノルディア国にあるルーゼの香水は、そこにあるだけの貴重なものです。その香水をアルナにほんの少し溶かすだけで、たちまち良い香りを放ち、アルナの匂いは気にならなくなります」
「ルーゼ……。ルーゼと言いましたか」
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