身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 ユレナはゆっくりまばたきをし、シルビアへ手を伸ばす。

「シルビア、それをこちらに」
「王妃様、よろしいのですか? 確かめたいことがおありでしたら、私が」
「かまいません。グレゴールが信頼して送り出した聖女を疑ってはいませんよ」

 シルビアは戸惑いながらも、小瓶を両手に乗せて、ユレナへと差し出す。ユレナはそれを受け取ると、エリシアを見つめたまま蓋を開け、中の香りを逃すように瓶を揺らした。

「確かに、ルーゼの香りがします。まだ……あったのですね、この香水が」
「ルーゼの香水をご存知なんですか?」

 少々驚いてエリシアは尋ねたが、同時に、父が国王に献上していないはずがないとも気づいた。

「この香水が作れる男はもうこの世にはおりません」
「その男が生前に作った最後の香水がそちらになります」

 きっぱりと答える。ユレナは少し考えるようなしぐさをしたあと、後ろに控える年配のメイドを振り返り、何やらこそこそと耳打ちする。メイドは静かにうなずくと、すぐさま部屋を出ていった。

「わかりました。聖女エリシア、あなたを信じてみましょう。ルイが嫌がるようなら、アルナもルーゼの香水も使用を禁じます」
「かまいません。許可をくださり、ありがとうございます」

 エリシアが頭をさげると、ユレナはシルビアへ目を移す。

「すぐにアルナをここへ。ルイのそばへ運びなさい」
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