身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 カイゼルは唇を歪めると、両腕を組む。

 うわさは知らないでもなかったが、根拠のないうわさ話と捨ておいたのがいけなかっただろうか。

「すっかり、人心をつかんでいるというわけだな。それで、修道女になりたいとノアムに来た理由は?」
「そんなことまで知りたいんですか?」

 ビクターはあからさまにあきれた。

「出自を疑っている。本当に聖女としての力があってもなくても、宮殿にまで入り込んできたとなれば見過ごせないだろう。ルイに何かあってからでは遅い」

 ルイはまだ四歳の子どもだ。善悪もつかない中、看病をするエリシアに警戒することはないだろう。

「王妃陛下は調べさせたそうですよ」

 思い出したように、ビクターは軽くそれを口にした。

(なんだとっ?)

 そんな重大な事実をなぜ報告しないのか。はらわたが煮えくりかえる思いで尋ねる。

「調べさせたとは、どういうことだ」
「エリシアさんが使う香水が気になったみたいですね」
「香水……?」

 眉をひそめる。母は各地から香水を買い集めるのが好きだが、エリシアの香水に何か疑念があったのだろうか。

「なんでも、ルーゼから作られた香水だとか。ルーゼは珍しいものですからね。なぜ、エリシアさんが持っているのか気になったのでしょう」
「ルーゼを? それで、何かわかったのか?」

 ビクターはすぐさま首を横に振る。

「メイドたちは口が固いですからね。詳しくは話しませんよ。ただ、王妃陛下が調査結果に満足して、ルイ殿下の看病をエリシアさんに一任しているところを見れば、申し分ない聖女だということでしょう」

(だから、誰もエリシアを疑わず、ルイの看病を任せているだと?)
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