身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
*
食器の重なる音に気がついて、エリシアは眠たい目をこすりながら顔をあげた。ベッドサイドのテーブルに、使用済みの皿が数枚重ねられ、昨夜メイドが運んできたはずの果物もなくなっていた。
「やっと起きたか。すっかり食べ終わってしまったぞ。おまえもあまり食べてないそうだな」
「え……」
視線をずらすと、ナイトローブ姿のカイゼルが、あきれ顔でこちらを見ている。その手には空になったグラスが握られ、優雅に食事を楽しんだあとのようだった。
「サンドイッチを作らせた。さっさと食べて出ていけ」
テーブルにあるサンドイッチの皿を突き出され、エリシアはあわてて両手を伸ばす。そのとき、肩から何かがずり落ちて、ハッとする。
「これは……」
拾いあげたそれは、黒い衣服だった。たくさんの勲章がつけられた、それはそれは高貴な上着だ。
(カイゼル様が寒くないようにかけてくれたのかしら……)
目の前でしかつめらしい顔をした男が、わずらわしく思っている女にそんなことをするだろうか。しかし、この部屋へ出入りするのはメイドとビクターのみ。カイゼルの上着を無断で彼らがかけるはずもなく。
「いらないなら、そう言え」
じっとカイゼルを見ていると、彼はぴくりと鼻にしわを寄せ、皿を引っ込めようとする。
「あっ、いただきます。あの……上着、ありがとうございます」
エリシアはすぐに上着をハンガーにかけて片付けると、サンドイッチの皿を受け取った。
じろりとこちらを見ているカイゼルの視線が気になりながらも、エリシアはサンドイッチをぱくりとほおばった。やわらかいパンにはさまれた鶏肉の燻製から、細かく刻んだハーブのいい香りがする。
(すごく贅沢なものよね。私のために作らせたなんて、やっぱりカイゼル様はお優しい方なのかしら)
食器の重なる音に気がついて、エリシアは眠たい目をこすりながら顔をあげた。ベッドサイドのテーブルに、使用済みの皿が数枚重ねられ、昨夜メイドが運んできたはずの果物もなくなっていた。
「やっと起きたか。すっかり食べ終わってしまったぞ。おまえもあまり食べてないそうだな」
「え……」
視線をずらすと、ナイトローブ姿のカイゼルが、あきれ顔でこちらを見ている。その手には空になったグラスが握られ、優雅に食事を楽しんだあとのようだった。
「サンドイッチを作らせた。さっさと食べて出ていけ」
テーブルにあるサンドイッチの皿を突き出され、エリシアはあわてて両手を伸ばす。そのとき、肩から何かがずり落ちて、ハッとする。
「これは……」
拾いあげたそれは、黒い衣服だった。たくさんの勲章がつけられた、それはそれは高貴な上着だ。
(カイゼル様が寒くないようにかけてくれたのかしら……)
目の前でしかつめらしい顔をした男が、わずらわしく思っている女にそんなことをするだろうか。しかし、この部屋へ出入りするのはメイドとビクターのみ。カイゼルの上着を無断で彼らがかけるはずもなく。
「いらないなら、そう言え」
じっとカイゼルを見ていると、彼はぴくりと鼻にしわを寄せ、皿を引っ込めようとする。
「あっ、いただきます。あの……上着、ありがとうございます」
エリシアはすぐに上着をハンガーにかけて片付けると、サンドイッチの皿を受け取った。
じろりとこちらを見ているカイゼルの視線が気になりながらも、エリシアはサンドイッチをぱくりとほおばった。やわらかいパンにはさまれた鶏肉の燻製から、細かく刻んだハーブのいい香りがする。
(すごく贅沢なものよね。私のために作らせたなんて、やっぱりカイゼル様はお優しい方なのかしら)