身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
フェルナ村には、異国につながる商業用の道がある。そこは年中馬車が行き交い、商人たちは王都と異国の間にある街や村に物品を売りにきている。還炎熱が発生してない地域はいずれも、その道沿いにあった。
「あ……」
「何かわかったか?」
カイゼルが前のめりになる。エリシアは顔をあげ、はっきりとうなずいた。
「フェルナ村から北へ向かう一部の街は、どこも赤く塗られていません」
エリシアはその街の場所を指差していく。
「この街に何がある?」
「父が……グスタフ・オルティスが、収穫したルーゼを売却していた地域です」
「何……ルーゼだと?」
「はい。ルーゼはもともと北の異国の果物です。父がその苗を持ち帰り、フェルナ村で育てました。しかし、ルーゼは甘酸っぱくて、ノルディア国では好まない地域がいくつかありました。王都もその一つです。ですから父は、ルーゼの味を好む地域には生のルーゼを。そうではない地域には、香水や酒に作り替えて売っていました」
「その地域が、赤く塗りつぶされていない場所ということか」
カイゼルがうなると、ビクターが口を開く。
「つまり、ルーゼに秘密があるかもしれないということですよね? エリシアさん、何か心あたりは?」
「私はルーゼを食べて育ちました。フェルナ村の人々も同じです。でも、大聖堂の患者たちにルーゼを振る舞ったことはありません。そもそも、父の育てたルーゼは干ばつで枯れ、今は手に入らないのです」
「じゃあ、なぜ、エリシアさんの看病した者たちだけが再燃しないのか……」
ビクターがくしゃりと前髪をつかんだとき、エリシアは「あっ……」と声をあげた。
「何か思い出したか?」
「実は、あの……」
「なんだ。もったいぶらずにはやく言えっ」
「あの、怒らないで聞いてください」
「だから、はやく言えと言っているっ!」
カイゼルはかみつかんばかりの勢いで、エリシアの両肩をつかむ。
(怒らないでって言ってるのに……)
「あ……」
「何かわかったか?」
カイゼルが前のめりになる。エリシアは顔をあげ、はっきりとうなずいた。
「フェルナ村から北へ向かう一部の街は、どこも赤く塗られていません」
エリシアはその街の場所を指差していく。
「この街に何がある?」
「父が……グスタフ・オルティスが、収穫したルーゼを売却していた地域です」
「何……ルーゼだと?」
「はい。ルーゼはもともと北の異国の果物です。父がその苗を持ち帰り、フェルナ村で育てました。しかし、ルーゼは甘酸っぱくて、ノルディア国では好まない地域がいくつかありました。王都もその一つです。ですから父は、ルーゼの味を好む地域には生のルーゼを。そうではない地域には、香水や酒に作り替えて売っていました」
「その地域が、赤く塗りつぶされていない場所ということか」
カイゼルがうなると、ビクターが口を開く。
「つまり、ルーゼに秘密があるかもしれないということですよね? エリシアさん、何か心あたりは?」
「私はルーゼを食べて育ちました。フェルナ村の人々も同じです。でも、大聖堂の患者たちにルーゼを振る舞ったことはありません。そもそも、父の育てたルーゼは干ばつで枯れ、今は手に入らないのです」
「じゃあ、なぜ、エリシアさんの看病した者たちだけが再燃しないのか……」
ビクターがくしゃりと前髪をつかんだとき、エリシアは「あっ……」と声をあげた。
「何か思い出したか?」
「実は、あの……」
「なんだ。もったいぶらずにはやく言えっ」
「あの、怒らないで聞いてください」
「だから、はやく言えと言っているっ!」
カイゼルはかみつかんばかりの勢いで、エリシアの両肩をつかむ。
(怒らないでって言ってるのに……)