身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
宮殿へ近づくにつれて、何人の人々とぶつかりそうになったかわからない。道は開けるどころか、次第に人々が増えていき、とうとう、宮殿を目の前に進めなくなってしまった。そればかりか、周囲の様子はいつのまにか、物々しい雰囲気に一変していた。
「頼むっ! 聖女様に会わせてくれっ」
「息子が……、息子がもうずっと熱を出して死にそうなんですっ」
「うちもだ! うちの女房も中へ入れてくれっ!」
あちらこちらから、助けを求める悲痛な声があがっている。
(聖女様……? 大聖堂に着いたのかしら)
しかし、これはいったいどうしたことだろうか。ふと、脳裏に馬車での会話がよぎった。
(ルイ殿下がご病気だと聞いていたけど、それだけじゃないのかしら……)
エリシアは人波にもまれて身動きが取れなくなっていたが、誰かに肩を押されて、壁際へ追いやられた。バッグが人々の体の間に挟まってしまっている。引きちぎれそうになる紐をたぐり寄せると、バッグが抜けた勢いで後ろに尻もちをついた。
(どうしよう……。これじゃあ、大聖堂に近づくこともできない)
あわててエリシアは四つん這いになったまま後ろへ抜け出た。土まみれのスカートをはらい、離れた場所から人だかりを見上げると、巨大な建物が視界いっぱいに広がった。
白亜の石造りの壁は、沈みかけた夕日を浴びて赤く輝いている。天へと向かって伸びる高く細い尖塔が、まるで神に祈りを捧げるように空を突き刺していた。
人々が集う入り口の両側には、天使の彫刻が静かにたたずみ、訪れる者を優しく見下ろしている。見るだけで思わず涙が込み上げてくるような格式高さを感じる。これが、ノアム大聖堂。王国随一の聖なる場所なのだと、エリシアの心は震えた。
「頼むっ! 聖女様に会わせてくれっ」
「息子が……、息子がもうずっと熱を出して死にそうなんですっ」
「うちもだ! うちの女房も中へ入れてくれっ!」
あちらこちらから、助けを求める悲痛な声があがっている。
(聖女様……? 大聖堂に着いたのかしら)
しかし、これはいったいどうしたことだろうか。ふと、脳裏に馬車での会話がよぎった。
(ルイ殿下がご病気だと聞いていたけど、それだけじゃないのかしら……)
エリシアは人波にもまれて身動きが取れなくなっていたが、誰かに肩を押されて、壁際へ追いやられた。バッグが人々の体の間に挟まってしまっている。引きちぎれそうになる紐をたぐり寄せると、バッグが抜けた勢いで後ろに尻もちをついた。
(どうしよう……。これじゃあ、大聖堂に近づくこともできない)
あわててエリシアは四つん這いになったまま後ろへ抜け出た。土まみれのスカートをはらい、離れた場所から人だかりを見上げると、巨大な建物が視界いっぱいに広がった。
白亜の石造りの壁は、沈みかけた夕日を浴びて赤く輝いている。天へと向かって伸びる高く細い尖塔が、まるで神に祈りを捧げるように空を突き刺していた。
人々が集う入り口の両側には、天使の彫刻が静かにたたずみ、訪れる者を優しく見下ろしている。見るだけで思わず涙が込み上げてくるような格式高さを感じる。これが、ノアム大聖堂。王国随一の聖なる場所なのだと、エリシアの心は震えた。