身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「すぐに用意いたします。エリシアさんはお部屋で待っていてください。メイドに運ばせますので」
「いいんですか?」

(大聖堂に着いたら、着替えたいって言っただけなのに……)

 どうしてこうもカイゼルが絡むと話が大げさになっていくのか。エリシアが戸惑っていると、カイゼルが皮肉げに笑う。

「いいも何も、エリシアがそれを望んだんだろう。気にするな。看病の礼とでも受け取っておけ」
「お礼だなんて……。私は当然のことをしたまでです」
「その当然とやらを拒むものは多い。おまえは聖女ではないが、尊い娘であるのは認めよう」
「……あ、ありがとうございます」

(どうしたのかしら、いったい。ついさっきまで煙たがっていたのに)

 カイゼルが部屋を出ていくと、ビクターがうれしそうに話しかけてくる。

「エリシアさん、やりましたね。殿下があなたを認めましたよ。よほど、還炎熱解決の糸口を見つけたのがうれしいんでしょう」
「ルーゼが関係してるなんてまだ何も」
「結果はどうあろうとじゅうぶんです。還炎熱が発生して、もう一年になります。これまで何の進展もなく、民は不安に陥り、疲弊してきましたから、殿下も心を痛めてきたんですよ」

 カイゼルが自身を追い詰め、倒れるほどの激務が続いていたのは間違いないだろう。

「……少しでもお役に立ってるなら、私もそれだけでいいんです。お礼とか認められるとか、そういうことは困ってしまうというか」
「エリシアさんは本当に無欲ですね。殿下がお気に召すのもわかる気がします」

(気に入られてるとは思えないけれど……)

 ビクターのにこやかな笑顔に戸惑いながら、エリシアは途方にくれた。
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