身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



「少し……派手ではありませんか?」

 用意された馬車に乗り込んだエリシアは、じっと見つめてくるカイゼルの視線に耐えかねて、そう尋ねた。しかし、すぐに後悔する。カイゼルが眉をひそめたからだ。

(ビクターさんの選んだドレスに不満があるって思われたかしら……)

 エリシアはまぶたを伏せて、広がるドレスに視線を落とす。

 銀糸の刺繍が施された鮮やかなラベンダー色のドレスは、男爵令嬢であったころにも着たことがないような、普段着にしては上質なものだった。メイドに勧められて、いつも下ろしている髪も結い上げて、耳飾りもつけた。まるで、浮かれて街へ遊びに出かける令嬢のようだ。

「いや、よく似合っている。爵位ある男の娘というのは本当らしい。婚約者と再会すれば、そいつはもう手放さないのではないか?」

 冗談になってると思ってるのだろうか。エリシアは困りながら答える。

「……ですから、婚約者なんていう立派なものではありません。父の名誉を欲しただけの人なんです」
「名誉か。たしかに、グスタフはもっと評価されるべき男だった。無欲なのは父親譲りなのだな」

 どうも伝えたいことが伝わってないようでもどかしい。カイゼルとともにフェルナ村へ向かい、もし、そこでガレスと再会したとき、結婚するように勧められたら、王太子の命令を拒めるか不安になってくる。

 エリシアは馬車の外へ目を向けた。宮殿が次第に離れていく。大聖堂を離れた日も、こうしてカイゼルとともに馬車に揺られていた。

「あのとき、エリシアは俺に見向きもしなかったな」
「……あのとき?」
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