身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 カイゼルは冷たい眼差しでぴしゃりと言うと、ガレスへと目を移す。村長と同様に、底意のわからない薄気味悪い笑みを浮かべるガレスを見るなり、嫌悪したようにぴくりと眉をあげる。何か言うのではないかとヒヤヒヤしたが、すぐにカイゼルは目をそらし、ビクターへ指示する。

「グスタフの作業場へ行け。ルーゼに関わるものすべてを回収しろ」
「すぐに」

 ビクターは一礼すると、エリシアの隣へやってくる。

「作業場はどちらに?」
「村の南にあります。日当たりのいい場所に果樹園があって、その近くに。果樹園はもう荒地になってしまっていて……」
「わかりました。先に調べさせてもらいます。エリシアさんは殿下とともにいらしてください」

 ビクターはそう言うと、エリシアの自宅のある方へと駆けていった。その後ろ姿を見送ったカイゼルも、すぐに歩き出す。エリシアが続こうとしたとき、腕をぐいっとつかまれて、ハッと振り返る。ガレスが鋭い目でこちらをにらんでいた。

「よく帰ってこれたな、エリシア。おまえに逃げられたと俺は村中の笑い者になってるんだぞ」

 低い声で、ガレスは脅すように言う。

 エリシアは湧き上がる恐怖心に身体を震わせたが、毅然と胸を張った。還炎熱に苦しむ人々を見てきた後では、ガレスのような私利私欲で動くだけの人間が小さく見えたのだ。

「今はルーゼの調査で来ているので、村民の代表としてご協力いただければ助かります」

 ガレスの目を見て、はっきりとそう言った。エリシアがおびえるどころか、まったく相手にしていないことに気づいた彼は、怒りを目に浮かべた。
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