身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
(困らせるって、何を? 勝手に口を出してきたのはカイゼル様なのに、おかしな人だわ)

「助けてくださったことは感謝してますけど、そんなふうにおっしゃるなら、助けてくださらなくても……」
「迷惑だって言いたいのか」
「迷惑がってるのは、殿下でしょう」

 言い返すエリシアを、カイゼルはいまいましそうに見つめる。

「おまえはどうも、ほかの娘と違って俺に意見するのが好きらしい。聖女だと偽って宮殿に入り込んだかと思えば、俺の看病を買って出て、還炎熱解決の糸口までいともあっさりと……」
「まだ何かお疑いなんですか?」
「そんなことは言ってないだろうっ。普通の娘ではなし得ないことをするおまえが気になって仕方ないと言ってるんだ」
「え……」

(気になるって……何?)

 カイゼルは不機嫌になりながら、同時にほおを赤らめる。

「なぜこんな気持ちになるのか、正直俺もわからん。これ以上、わずらわせるな」

(だから、困らせるなって言ったの……?)

 ぼう然と立ち尽くしていると、カイゼルはちらりとこちらを見て、手を差し伸べる。

「行くぞ。おまえはすぐに問題を起こすからな。いいか、俺から離れるんじゃないぞ」

 ふたたび、エリシアはカイゼルの手を握った。胸がざわついて、ドキドキした。カイゼルを見上げてみるが、彼は意識してこちらを見ないようにしているのか、ますます顔を背けてくる。

(何かしら……、本当に。私だって困るわ)

 無言で歩き続けると、家の前で手を振るビクターの姿が見えた。

「あれが、グスタフの仕事場か?」
「……私の家です」

 恥ずかしさのあまり、身体を縮こませると、カイゼルは驚いたようにこちらを見たが、すぐに口を開く。

「ずいぶん苦労したようだ。修道女の生活の方がいいと思うのは当然か」
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