身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「そういえば、父は言ってました。王都にはなんでもある。新しいものは異国から取り入れなければいけないって」
「そうでしたか。ルーゼの香水は異国にすら存在してないようですから、その学術書を読み解いてみる価値はありそうですね」

 ビクターは早速、二冊目の学術書を手に取る。

「芳香術全書は全部で三冊のようですね。あれ?」

 三冊目を持ち上げたビクターが首をひねる。

「どうされたんですか?」
「これ、すごく軽いんですよ」

 二冊目と三冊目の厚みは同じぐらいだ。

「開けてみろ」

 カイゼルが指示すると、ビクターは三冊目をそっと開いた。

「これは……」
「何かあるんですか?」
「……手紙、ですかね? 本の中をくり抜いて、別の紙が差し込まれてます」
「手紙? 見せてください。父の筆跡ならわかります」

 ビクターはすぐさま四つ折りにされた何枚かの紙を渡してくれた。黄ばんだ紙を開いたエリシアはハッと息を飲む。

「父の文字で間違いないです。エリシアへ……って、私へ宛てた手紙みたい」
「なんて書いてある?」

 カイゼルはずけずけと顔を突き出してくる。何か重要なことが書かれてるのではないかと疑ってるんだろう。

「待ってください。いま、読みますから」

 至近距離に近づいた彼の顔に驚いて、エリシアは戸惑いながら手紙を開く。

「えっと……エリシアへ。おまえがこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にいない……」

 エリシアは言いよどむと、カイゼルを見上げる。彼はそっとうなずき、エリシアの肩に手を乗せる。大丈夫だ。そう言われたようで、エリシアはふたたび、手紙に目を落とした。
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