それは麻薬のような愛だった
「本当に送り狼とかしてないんですね?」
「そうだって。ねえ?雫ちゃん」
「はあ…まあ、はい」
してたらそれこそ問題だろうと内心思いつつ、雫はテーブルに置かれた水を飲んだ。
「さすがの俺もその気のない子をどうにかするつもり無いって。雫ちゃん、あからさまに無理矢理連れてこられました〜って雰囲気出してたもん」
「えっ、うそ」
山中の言葉に少なからず冷えたものを感じたが、当の本人は全く気にした様子も無く続けた。
「嘘じゃないけど、まあいいんじゃない。雰囲気は悪くなかったし、雫ちゃんも楽しそうには飲んでたし」
「…えと、それは…なんて言ったらいいのか…」
「結構飲んでたよね。お酒、本当に強いんだね」
含みのある笑顔に苦笑いで返す。この全てを見透かしたような目は苦手だ、雫は直感的にそう感じた。
そこで一旦会話は途切れ、各々食事を注文することになった。雫はオススメと書かれたナポリタンを選んだが、正直胃に入る気は全くしなかった。
ここに来て颯人とは一度も目を合わせていない。
颯人は一体自分をどう思っているのか。突然別れを切り出しまともな理由も告げずに連絡を絶った自分を恨んでいるだろうか。そう思うと酷く肩身が狭かった。
「じゃあちょっと俺、一服してくるよ」
店員が下がると同時、山中はそう言ってその場を後にした。
ここで2人きりにされるのかと肝が冷えたが引き留めるのも何かが違う。そう思い硬直したまま去っていく背中を見つめていれば、颯人から「雫、」と久しく名前を呼ばれた。