それは麻薬のような愛だった
しばらくしてなんとか気力を取り戻し、始業時間前に体調不良での休みの連絡を入れ、その日の午後には病院へ向かった。
そしてそこで雫は産科医からはっきりと告げられた。
「おめでとうございます」と。
「…え…」
手渡されたエコー写真には確かに黒い空洞が映っていて、妊娠は確定へと変わった。
「次は心拍の確認になりますから、また2週間後にいらしてくださいね」
「……はい…」
なんとかか細い声でそう返事をし、雫は診察室を後にした。
その後の会計の際に受付で次の予約日程を確認され、ますます現実味が増してくる。
何も考えられないまま自宅へと戻り、玄関で靴も脱がないまま、雫は力無く床に座り込んだ。
「どうして…」
相手は一人しかいない。
けれど伊澄はいつも避妊だけは完璧だった。
遡って時期を考えても、酒に溺れて記憶を無くしたあの日しか考えられない。
だが、だからといってあの伊澄が避妊を怠るだろうか?…そんなはずはない。
となれば、何万分の一の確率と言われる程のその中に当てはまり、失敗してしまったのだろう。
「……」
お腹に手を当てるが、今はまだ何も感じない。けれど確かに此処に新しい生命は存在している。
選択肢は2つ。
——産むか、それとも、堕すか。