それは麻薬のような愛だった

自覚したせいなのか、その夜から悪阻に苦しめられた。

立ち上がることもままならず、すっかり荒れた部屋はそこかしこに物が散らばり目も当てられない。それより何よりまずいのは食事ができない事だった。

何を食べても、お茶を飲んでも気持ちが悪い。何故これほどまでに母体へ苦労を課すのかと、人体の原理を恨んだ。

それと同時に、明らかに以前とは違う体に確かに自分の中で命が育っている事を痛感し、時間と共に我が子への情が増していく。

もし堕すなら早い方が良い。そうは分かっていても、今の雫にそんな事は出来るはずがなかった。


深夜を超えて何とか眠りにつき、何度か目を覚ましながらしっかりと覚醒したのは翌日のすっかり日が高くなった時間だった。


「うっ…」


起きあがろうとすれば吐き気に襲われ、再びベッドに身を落とす。そのままどれほどの時間が経ったのだろう、雫は未だ起き上がれずグッタリとしていた。

そんな時、来客を知らせるインターホンが部屋中に鳴り響いた。


「……」


ネットで何か頼んだ記憶も無いので何かの勧誘だろうと居留守を使ったが、何故か何度もしつこく鳴らしてくる。

仕方なくのろのろと起き上がり、腹を抱えながらドアホンを確認すれば、今一番会いたく無い顔がそこにあった。


「いっちゃん…」


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