それは麻薬のような愛だった
連絡無しに来るのは珍しい。いや、もしかしたらきていたかもしれない。昨日からスマホを見る余力もなく眠っていたから。
雫は震える手で通話のボタンを押し、意を決して返事をした。
『雫、開けてくれ』
開けろ、じゃなくて開けてくれ。
どこか余裕の無い、そんな懇願するような言葉にキュウと胸が締め付けられた。雫は黙って解のボタンを押し、そのまま壁に体を預ける。
間も無く玄関のインターホンも鳴り、雫はドアのロックを解除してゆっくりとそれを開いた。
「お前、連絡も返さずどうし…——」
伊澄は雫の顔を見るや否や目を見開き、雫の体を押し込むように抱き無理矢理家の中へと押し入った。
「体調悪いのか?なんで言わなかった」
「…ごめん」
真っ直ぐに伊澄の顔が見られず、雫は目を伏せながら謝罪した。
「…チッ!」
伊澄は慌てた様子で雫を横抱きにすると一瞬顔を顰め、直ぐに廊下を抜け部屋の隅にあるベッドへ運び優しく下ろした。
「雫、お前かなり痩せてるぞ。食事は摂れてるのか」
「…あんまり」
「…っ、」
伊澄は苦虫を噛み潰したような顔を見せ、こんな事ならもっと早く来るべきだったと忌々しげに吐き捨てた。