それは麻薬のような愛だった
「明日空いてるか」
声を聞いただけで会いたくて堪らなくなった。気付いた時にはそう聞いていて、一瞬沈黙が流れた。
『…うん、空いてるよ』
「じゃあ昼頃そっち行く」
『分かった。待ってるね』
それじゃあ、そう言って電話はあっさりと切られた。そのままスマホを懐に仕舞うと、伊澄はソファの背もたれに身を預けて天を仰いだ。
「…本当、今更だな」
今更足掻こうというのか。
もう雫の心は自分に無いと言うのに。
「……」
ずっと彼女はこんな気持ちだったのだろうか。
手に入らないものに手を伸ばしても掴めず、それどころか突き放され、それでも尚ずっと僅かな期待に縋り続けてきた。
——男の傷は男で癒す。
そうなっても仕方ない。
雫に他の男が居たところで責める資格など欠片も有りはしない。
それでも今、雫がまだ自分の誘いに応えてくれるうちは、彼女を諦め離れる事など耐え難かった。
それならばみっともなく足掻いてやろうと決めた。
雫が自分を拒絶するまで。
彼女がもう一度自分を見てくれる、その一縷の望みに、みっともなく縋ったとしても。