それは麻薬のような愛だった
「雫…?」
「ごめん、また泣いちゃった。…けど、すごく幸せで」
そう言って笑う雫の表情に、偽りは感じなかった。
「私もいっちゃんをまだ独り占めしたい。…なんにも出来ないけど、ギリギリまでここにいてもいいかな?」
「俺がそう頼んだんだから当たり前だろ」
「ありがとう…。…それと、さっきはごめんね。カッとなって実家に帰るなんて言っちゃって」
「…あの言葉は割と焦ったな。それに結局、雫にクソなんて言わせちまった」
「えへへ、それもごめんなさい」
何とも可愛らしい笑顔で言い、雫は伊澄の胸元に顔を埋めた。
「信じてるよ、いっちゃん。これからも私の事だけ好きでいてね」
「今までだってこれからだって雫以外なんか欠片も興味ねえわ」
「…そっか。…ねえ、いっちゃん」
「なんだ?」
「あのね…私、やっぱりいっちゃんのこと大好き」
そう言って自身に体をすり寄せる雫に愛しさと同時に安心を覚える。先程の出来事は、正直生きた心地がしなかった。
「…俺もだよ、雫」
堪らない愛しさを感じながら、目の前の唯一無二の存在の肩に顔を埋める。雫の優しい香りに癒されながら、伊澄は腹の内で燻る憤りを感じていた。
その匂わせとやらが本当ならば、その顔も知らない相手に若干の殺意を覚える。勝手に懸想しているならともかく雫に害意を向けるなら尚更だ。
雫に対しこれ以上無いほどに甘い顔を向けながら、伊澄は怒りを募らせていた。