それは麻薬のような愛だった

冗談混じりで尋ねたのにあっさりと甘やかす言葉を返され、最近全く伊澄との時間を過ごせていなかった雫の顔は真っ赤に染まる。

そんな雫に目を向けた伊澄はにやりと笑いながら「お前免疫落ちたんじゃねえの」と言うので、雫は悔しげに唇を突き出し伊澄の背中を軽く叩いた。


「会計終わってるならそろそろ行くか。実家寄って車で来てるからそのまま向かうぞ」

「うん。わざわざありがとう」


伊澄は雫の抱えていた大きなマザーズバッグも受け取り車の停めてあるという駐車場まで向かう。


「またお休み取らせちゃってごめんね。お仕事大丈夫だった?」


隣をゆっくりと歩く伊澄に雫は声をかける。伊澄は足を止めることはしなかったが、目配せをしながら雫の問いかけに頷く。


「問題ない。二人に会いたかったし…それに、雫に話しておかないといけない事があるから」

「私に?」

「ああ。後で落ち着いてから話す」


雫の心に微かな不安が落ちる。良くないことでもあったのだろうかと思って見つめるも、伊澄が落ち着いてからと言っている以上深掘りはできない。

それに話が全て悪いものとは限らない。不安になって待つ所は自分の悪い癖だと思い直し、雫は前を向いた。


そのまま伊澄の車のチャイルドシートに紬を乗せ、雫は助手席に乗り込み伊澄の運転でケアホテルへと向かった。

滞在するのは2泊3日、ベビールームにて24時間いつでも預かってもらえる為、この機会にゆっくり休んでほしいと伊澄からの提案だった。

食事もおやつを含めた1日5食で至れり尽くせり。器用な伊澄なら簡単にやってのけそうだが沐浴指導も受けられるとのことでそちらは予約済みだ。


チェックインを済ませて部屋に入り、空腹で泣き出した紬にミルクを与えげっぷが出たことを確認すると、満腹でまた寝てしまった紬をベビーベッドにそっと置いた。


「動画で見るのと実際にやるのとじゃ、当たり前だが全然違うな。ふにゃふにゃしてて少し怖い」

「それでも上手だよ。さすがいっちゃん」


起こさぬよう寝室に置いて二人でリビングへ移動する。貸し出してくれたベッドには体動センサーをつけてくれているので、何かあった場合も安心だ。

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