それは麻薬のような愛だった
「悪い。子育てに追われてそれどころじゃなかったよな。雫に会えたのが嬉しくて少し欲張り過ぎた」
「!ごめ、違うの…!」
慌てて否定して伊澄の袖を掴む。急に声を上げたせいで紬が不快そうに体を捩ったけれど、軽く背中を叩かれるとすぐに落ち着いた。
伊澄の腕の中で心地良さそうに目を細めている紬に安心し、雫は静かに肩を落とした。
「ごめんね、いっちゃん。…私もずっと会いたかったよ。こうして側にいてくれて今すごく幸せ」
「…ん、そうか」
「けど…さっきいっちゃんが言った通り、今隈も酷いし見なりも適当でぼろぼろだから…じっくり見られるの、ちょっと嫌で」
雫が素直な気持ちを吐露すると、案の定伊澄は固まる。伊澄はそんな事で幻滅するような冷たい人じゃない、そうは分かっていても、今でも伊澄に恋する気持ちは健在なのだ。
好きな人にみっともない姿を見られたくないと思ってしまうのは、女として避けられないことだった。
「…そうか」
伊澄は言葉短にそう言って立ち上がり、一緒に持ってきていたベッドに紬をそっと置く。そして雫の目の前に肘をつくと、そのまま両腕で抱き寄せた。
「こうすれば、素直に言ってくれるか?」
「えっ?」
久しぶりの抱擁に雫の心臓がドッと音を鳴らす。胸を打ちつける鼓動と動揺でそのまま固まっていると、伊澄は静かに続けた。
「俺はどんな姿の雫でも可愛いと思うけど、雫が見られたくないってなら無理強いはしたくない。ならこうすれば、俺の気持ちも伝わって一石二鳥だろ」
「……」