それは麻薬のような愛だった
論理的というか屁理屈というか、そんなところが伊澄らしい。そうまでして自分からの言葉を望んでくれているのかと思うと、雫の胸は痛いほどに締め付けられた。
「ありがとう…いっちゃん」
伊澄の心を理解した雫は腕を回す。その心遣いが何よりも嬉しく、雫は甘えるように伊澄の肩に顔を埋めた。
「…私も、いっちゃんが大好きだよ。…ううん、私が一番いっちゃんの事が好き。世界一だよ」
「…そうか」
伊澄の大きな手で頭を撫でられ、雫は溶けてしまいそうなくらいの幸せで満たされた。ずっとこのままでいたいと体を寄せていると、少しだけ離れて、そして唇を耳元へと寄せられた。
「なら…俺はもっと、雫の事を愛してるよ」
「!」
顔は見ないで欲しい。自分からそう言ったはずなのにあまりの甘い声に反射的に体を離してしまった。
途端に目が合い、熟れた果実の如く真っ赤に染まった顔を見られ雫は一体今の感情が羞恥なのか歓喜なのか訳がわからなくなってしまった。
しかし伊澄はそんな雫にこれでもかと愛おしいものを見つめる視線を見せる。優しげに両頬に触れて、そのまま自身へと引き寄せた。
「ん…、」
先程とは違う深いキスは、静かな部屋に水音を響かせていた。
久しぶりの口付けに恥ずかしくてたまらなかったはずなのに、雫の頭はゆっくりと溶けていき何も考えられなくなる。
時間を忘れ唇から伝わる伊澄の愛情に酔いしれていると、紬の「ふにゃあ」という子猫のような泣き声で雫の意識が引き戻された。
それに呼応するかのように長く交わっていた唇が離され、すっかり濡れた雫の唇を伊澄が指で拭った。