それは麻薬のような愛だった
その言葉にゾクリと背に冷たいものを感じた。
結婚しても尚伊澄がモテるのは知っていたが、そういう事だったのかと初めて気付いた。
まさか離婚を心待ちにされているとは思いもよらず、伊澄が結婚相手が自分であることを黙っていてくれて良かったと心から思った。
「お前、さすがにそれはがっつきすぎじゃねえ?」
「仕方ないじゃん。伊澄以上に良い男に出会えなかったんだから」
笑う男と不貞腐れる女。笑い話にしてしまえば良かったのだが、雫の胸に少しばかり重いものが落ちた。
決して伊澄の事を疑っているわけではないけれど、やはりこうもハッキリ言われてしまうと気分が良いものではない。
自分の嫉妬深さにほとほと呆れながら、雫は友人達の元へと歩み寄った。
「おかえり雫…ってめっちゃ盛ったね?そんなに食べる子だったっけ?」
「あ…久しぶりの日本食でテンション上がっちゃって…」
「分かる。向こうって大体大味だもんね。私も新婚旅行で1週間いったけど、帰ってきたその足でコンビニのおにぎり買ったわ」
友人達との平和な会話にホッとしながら雫は料理を口にする。
伊澄との結婚を伝えた時、驚きこそしたけれど誰も嫌味や悪口などは言わなかった。伊澄に憧れていた友人でさえ、おめでとう!という祝いの言葉と共に馴れ初めを深掘りされたくらいだ。
やはり自分はこちらの居場所の方が安心する。
笑顔を返しながら雫はテーブルに皿を置き、友人が取ってきてくれていたアルコールを一口飲んだ。
「そういえば雫、こっちに本格的戻ってくるのはいつなの?」
友人から聞かれ、雫はグラスから口を離して「半年後」と答えた。
「伊澄くんが無事にあっちでの試験もパスしてくれたし本社からも出来るだけ早く戻って欲しいって打診があったから、今帰国に向けて色々準備中なんだ」
「はあ〜本当すごいね。本当に1年で試験受かっちゃうんだもん」
出来るだけ雫を早く日本へ戻してやりたいと言い、持ち前の知力と体力で伊澄は住んでいたカリフォルニア州の弁護士資格を取得してしまった。
渡米する前から英語は日常的に使っていたし対策もしていたからとは言っていたが、さすが人生の勝者である。
あちらでの生活に慣れるだけでてんやわんやしていた雫とは大違いだ。