それは麻薬のような愛だった
「まあでも、やっぱり子育てするにはこっちに居る方が安心だよね。私も両方の実家遠いからキツくて」
「めっちゃ分かる!うちは私の実家近いけど、それでも毎日へとへとだもん〜」
「あんたのところは子ども3人いるしね。仕事もしてるんでしょ?本当尊敬するよ」
「いや実際、サポートなかったら仕事とかマジで無理だから。雫だってそうでしょ?」
話を振られ、「そうだね」と雫は頷く。
「復帰のタイミングは悩んでる。幼稚園に入ってからも考えたんだけど、小学生の壁に当たるとそれはそれで難しいし…」
「ほんとそれ!今の幼稚園もだけど、行ったかと思ったらすぐ帰ってくるんだもん!ほんといつ働くんだって話だよね」
言ったところでどうしようもない愚痴は止まらない。雫もいつでも復帰できるよう紬の就寝後などに勉強は続けているが、全く社会復帰の目処は立っていない。
それに伊澄も日本に戻れば、また以前のように多忙な日々が来るのだろう。それを考えると、なお仕事の再開は難しい。
そして、そうして雫が家にいる一方で伊澄は外で他人の目に触れる機会が多くなる。それはつまり、先程の女のように伊澄を狙う女が増える事に繋がるのではないか。そんな考えが頭を過った。
「……」
モヤつく考えを誤魔化すようにクイとアルコールを煽る。かつてのように嫉妬に塗れてしまいそうになる自分に、雫はひどく嫌気がさした。
「もーやめよやめよ!文句ばっか言ってると気分が病んじゃう!」
そう声を上げた友人の一人の鶴の一声で、雫の沈みかけていた気分が少しばかり上がった。
「雫が帰って来たらさ、 旅行がてらみんなで遊びに行こうよ。紬ちゃんももうしっかり歩けるよね?」
「あ、うん。ミルクも終わって食事も問題無いよ」
「なら尚更!子ども達も同年代の子が居たら楽しいだろうし。どうかな」
「いいね。昔みたいで懐かしい」
友人達と旅行。その言葉だけで胸が躍った。
雫も賛同すると、遊びを提案した友人は「遊園地なんてどう?」と続けた。
「昔みたいにみんなでお揃いの服着て、子どもにも衣装着せてみたりさ。なんせ私達には雫という衣装作りの神がいるからね!」
「ちょ、何ナチュラルに雫に頼ろうとしてんの?子育てで忙しいって話したばっかじゃん」
「良いよ。簡単なもので良ければサイズ教えてくれたら用意するよ」
「さっすが雫!」