それは麻薬のような愛だった

まだ先の話だというのについ盛り上がりついには日程まで候補を挙げ始めた頃、幹事からのアナウンスが会場に響いた。

それによると今回の企画は簡単なゲーム形式で、懐メロだったり当時流行ったドラマだったり学校でのイベントの事だったり、懐かしいものを当てるクイズだった。

参加しているうちに懐かしさと運で正解を続けてしまい、最終的に雫は2等の和牛セットが貰えてしまった。

これは海外への配送はアリなのだろうかと思いつつパネルと目録を受け取り、それ以上注目されないようそそくさと友人の輪へと戻った。


1等は今回も遊園地のペアチケットで、受け取ったのは名前も忘れてしまった同級生だったが、不意に雫の中にまた懐かしい感情が込み上げてきた。


——そういえば、前はいっちゃんが1等のペアチケット当てたんだっけ…


思えばあの時、チケットを使う為と誘われ一緒に行った遊園地は、デートであり伊澄からの最初のメッセージだったのではないだろうか。

伊澄を忘れようと、気持ちを消そうとしていた当時は考えもしなかったが、同窓会以降は雫一人だと言った伊澄の言葉を考えれば、そうだったのかもしれない。


——なんか…早くいっちゃんに会いたくなってきたな…


未だ伊澄に懸想する女の言葉を聞いたからかもしれない。友達との会話の中で、自身が社会からも伊澄からも置いてけぼりにされる不安を感じてしまったからかもしれない。

すぐにでも伊澄の顔を見て、自分を好きでいてくれる伊澄が居ることを確かめたくなってしまった。


はやる気持ちで閉会の挨拶を聞き、抱いてしまった邪な感情を隠しながら雫は友人達と会場を後にした。


「雫、帰りはどうする?一緒に乗せて帰ろうか?」

「あ、ううん。連絡したら迎えに来るって言ってもらってるから」

「えっ!天城くん来るの?一緒に待ってて良い?」

「あんたはもう…雫の旦那だよ?」


呆れる友人に不貞腐れて返す顔を見ながら雫は笑う。彼女の言動には憧れ以上の感情が無いことが伝わっていたから、笑って流すことができた。

そうでなかったら、不安になるに決まってる。

伊澄に結婚など続かないと言った、彼女のようであったならば。


「じゃあ電話するね」


そう言って雫がスマホを取り出した時、少し先に見えるエントランスホールには人だかりができていた。

どこかで見たような光景だなと思いながら伊澄の番号を見つけ出して通話ボタンを押そうとした時、ふと指が止まった。


——ちょっと待って。見覚えがあるって…


そう思ってからはすぐだった。

ロビーに出来た騒がしい人だかりの中心に伊澄が立っている事に気付いたのは。


< 197 / 215 >

この作品をシェア

pagetop