愛は花あられ
「師道社長、妃都を解放してあげてください。」
誠太は、まるで自分がヒーローにでもなったかのような口ぶりでそう言った。
誠太の言葉に怒りを抑え、師道社長は黙ったままでいたが、わたしは我慢の限界だった。
「ちょっと、誠太。いい加減にしてくれる?何を勘違いして、そう言ってるのか知らないけど、わたしは好きで師道社長と一緒に居るの。師道社長を愛しているから。」
わたしがキッパリそう言うと、誠太はわたしの言葉が信じられないとでも言うような表情で「はぁ?」と言った。
「ハッキリ言わせてもらうけど、解放されたいのは誠太からだよ。」
わたしの言葉に誠太はやっと恥を知ったのか、「そうかよ。」と言い残し、面談室から出て行った。
その後、誠太は総務課に異動願を提出したらしく、社長秘書から総務課へと異動し、その代わりに総務課から山本さんという男性社員が社長秘書になり、事なきを得た。
あれから、誠太はわたしに付き纏うことはなくなり、わたしは安心した。
そして、あの時にわたしが誠太を下の名前で呼んでいたことに師道社長は嫉妬したようで「高坂さんのことは、下の名前で呼んでたんだな。」と拗ねていたので、わたしは師道社長を普段から下の名前の"涼真"さんと呼ぶようになった。
それから月日は流れ、わたしが涼真さんと結婚してから半年が経ち、まだ残暑で冷房から卒業出来ない9月。
わたしは初めて朝を自ら起きられず、涼真さんに起こされた。
「妃都、大丈夫?具合悪いの?」
ハッと目を覚ましたわたしは、何が起こったのかすぐに理解出来ず、時間を見てやっと寝坊してしまったことに気付いた。
え?わたし、寝坊した?!
わたしは慌ててベッドから起き上がったのだが、目眩がしてふらついてしまい、気付けば涼真さんに支えられ「大丈夫?!今日は仕事休みなさい!」と心配をかけてしまった。
わたし、どうしちゃったの?残暑からの熱中症?
自分の身体なのに、何が起こっているのか理解出来ず、わたしはその日、仕事を休ませてもらった。