歪んだ月が愛しくて2



「……俺は、お前を嫌ったことなんて一度もない」

「だからもういいって」

「っ、聞けよ!俺がお前にあんなこと言ったのは、お前のことが好きだからだ!」

「………は、」



好き?

カナが、俺を?



「何、言ってんの…?だってカナが兄弟じゃないって…」

「……言ったよ。言ったけど、仕方ねぇだろう!俺はずっと前からリツが好きだった!兄弟としてじゃなくて、恋愛感情でお前のことが好きだったんだっ!」

「え」



俺が目を丸くさせたと同時にカナは自分が放ってしまった言葉が反芻して青褪めた。



「…っ」



カナは慌てて口元を片手で覆ったが、もう遅い。
うっかりと口を滑らせてしまった言葉は二度と取り消すことが出来なかった。



「恋愛感情って…」

「ああ、クソっ!こんなつもりじゃなかったのに!」

「………」



初めから伝えるつもりはなかったんだろう。……いや、伝えられないか。
俺だって胸に秘めた想いがある。言いたくても言えない、言ってはいけない想いが。



「……何ガン見してんだよ。そんな顔されても今更なかったことには出来ねぇんだよ。………好きだ。この際受け取んなくていい。せめて覚えてろ」

「カナ…」



何度言われてもピンと来ない。



「これからも今まで通りでいい。でも覚えててくれ。俺のせいでお前を傷付けて家に居辛くさせちまったけど、俺はお前を嫌ったことなんて一度もない。ガキの頃からお前のことがずっと好きだったんだ」



カナのことは誰よりも分かってるつもりだった。
俺達は家族で同い年の兄弟だからどこへ行くのにもいつも一緒で。
飯を食う時も、歯を磨く時も、学校に行く時も、風呂に入る時もいつも一緒で本当の双子のように育てられて俺もそれが当たり前だと思っていた。……あの時までは。
カナに兄弟じゃないって言われてカナのことが分からなくなった。
カナが怒っているのか、悲しんでいるのか、苦しんでいるのか。
そんな俺を見てカナが怪訝な顔をしていたことも気付いていた。
だからあの日を境に距離を置いた。これ以上カナを困らせたくなかったから。



「好きだ」



……違う。



本当はカナと向き合うことが怖かった。

カナの本心を聞くのが怖かった。

ただ自分が傷付きたくなかっただけなんだ。


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