歪んだ月が愛しくて2



「でも、嫌ってもいい」

「は?」

「俺がお前をそう言う目で見てることもそうだけど、お前には戻って来て欲しいんだ。お前のことが、大切だから…」



心臓が痛かった。

カナのことを想ったら無性に悲しかった。



「カナ…」



……あの頃と何も変わらない。

俺はまだこんなにも弱いままなのか。



「告白の返事もいらない。お前をどうこう出来るなんて思ってないし、そもそもダメ元だったし…。それにお前が好きなのは昔からアイツだってことも分かってる」

「、」

「何驚いてんだよ。まさか気付いてないと思ってたのか?」



思ってた…、と言うか気付かないで欲しかった。



「リツ」

「……何?」



カナの指が俺の目尻を撫でる。
温かい指が肌の表面を滑る感触に目を細めると俺を見つめる視線がまるで愛しいものを見るように優しくて甘かった。



「カナ…」



こんなに分かり易くてどうして今まで気付かなかったんだろう。

どうして俺はいつも後悔してからじゃないと気付けないんだろう。



「リツ」



その視線に耐え切れなくなり目線を下げると、もう一度名前を呼ばれた。



「ごめん…」



やめろ。



やめてくれ。



謝らないで。



「ごめんな」



謝らなきゃいけないのは俺の方だ。



「リ…「叶威」



瞬間、カナは驚いたように目を丸くさせた。
と同時にカナの頭に思い切り頭突きをかました。



「い゛ったぁ!」

「バカかお前は!」



グッと、カナの胸倉を掴んで顔を近付けた。



「カナが俺のことを大切だって言ってくれたように俺だってカナが大切だよ!だからこんなにも女々しく悩んでたんだろう!何年兄弟やってると思ってんだよ!分かれよ!分かってくれよっ!」

「っ」

「告白だってなかったことにすんなよ!謝るなよ!てかいくら頼まれたってカナの真剣な気持ちをなかったことにするかよ!俺はそこまで薄情じゃない!真剣な気持ちは真剣に応えるよ!」

「リ、ツ…」

「それに、……謝らなきゃいけないのは俺の方だ。俺は家出したのを全部カナのせいにしたんだ。本当はそれだけじゃないのに、俺はカナが全部悪いみたいに言った…」

「………」



ずっとカナを悪者にしていた。
そうすることで自分自身やカナと向き合うことから逃げていたんだ。



「……ずっと自分の居場所がないと思ってた。カナにも兄ちゃんの中にも俺は存在しない。存在しちゃいけないんだって、そう思うようにしてた…」



会長は分かってたんだ。

だからあんな風に焚き付けた。



(……敵わないな、悔しいけど)



そっと、俺の手にカナの手が重なる。



「それは違う。お前はいつだって俺達の中心にいたよ。お前がいたから親父とお袋がいなくなっても俺達は支え合って頑張って来れたんだ。お前がいたから…」

「、」



目頭が熱い。

ここに来てから涙腺が緩みっぱなしだ。


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