歪んだ月が愛しくて2



「でもライバルと言ったのは何も彼だけを指したわけではありませんよ」

「………」



そう言って九ちゃんは清々しいほどの笑顔を貼り付けて尊を挑発した。



……あ、分かった。

九ちゃんが何を言いたいのか。

でもそれはダメでしょう。

だってそんなこと言ったら王様の逆鱗に触れちゃうよ。



「立夏くんには好きな人がい…「黙れ」



あーあ、だから言わんこっちゃない。

九ちゃんも分かってるくせに止めないんだから本当勇者だよな。

俺には絶対真似出来ないよ。早死にしたくないからね。



「それこそくだらねぇ」



でも九ちゃんの一撃は効果覿面のようだった。



『―――それにお前が好きなのは昔からアイツだってことも分かってる』



『告白はなかったことにしない。俺はリツが好きだ。お前が兄貴のことを好きだって分かってても諦められなかった』



(兄貴、か…)



これは聞くに聞けないな。

多分リカにとっても触れられたくないことだと思うし、きっと尊もそう考えているから必死で感情を押し殺してるんだろうな。



「こりゃ相当キレてんな。どうすんだよこれ?」

「僕のせいですか?」

「お前以外に誰がいんだよ」

「自覚はしてます」

「自覚してんならやめろよな」

「それとこれは話が別です」

「はぁ…。怒らすだけ怒らして放置かよ」

「九ちゃんって本当勇者だよね、見習いたくはないけど」

「おい、未空どうにかしろよ。お前の兄貴だろう」

「そっちこそマブダチじゃん」

「うわっ、最悪」

「こっちの台詞だ」

「いっで!オメー暴力反対だぞ!」



リカのことも、頼稀のことも、尊のことも。



(あーあ、どうしたものかな…)


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